吉岡たすくさんは教育的視点から書かれていますが、私はコミュニケーションの視点から書いてみようと思います。
“教え込むより考えさせる” これを絵に当てはめてみると、子どもの好きなように、自由に思いきって描かせれば良いということになります。“時には、黒とか青とかの絵の具で“りんごを描いてごらん”と言ってみますと、子どもは一瞬悩み、考え、そして自分なりの想像力を働かせて描きますよ。“と吉岡さんはおっしゃいます。
でも、いつも教え込まれている子ども、枠にはめられている子、受身的な子どもは“そんなの描けない”と言って、描けないのが事実です。一足飛びにはいきませんが、こういった子どもたちも一寸した助言や助けをきっかけに変わることは可能です。
親子のコミュニケーションのあり方を話し合う集まりの時に あれこれ親が言わずに子どもに話させよう、といったトピックでの話し合いをしました。その時に “うちの子は、そんな風に対応したら何も言わないと思う” という、先に書いたことに通じるコメントを親からもらったことがあります。
教え込む、または親の考えを子どもの発言を待たずに発してしまう。これは、子どもの自主的な考える力を摘んでしまうだけではありません。自分の感じていることを表現する機会が与えられない子どもは、親との信頼関係を弱めていきます。わかってもらえない不満やもどかしさ、寂しさ、時には怒りを心に残します。
子どもが憤っている時に冷静に気持ちを聞いてあげるのは難しいかもしれません。つい “いったい何があったの!友達とけんかしたのか知らないけれど、お母さんにそんな態度はないでしょう” と反応してしまいます。そんな時 “なんだか随分怒っているみたいね。何があったのかしら” と出来事を話す機会を与えてあげたらいいんです。そして、子どもが言うことに納得がいかなくても、それはあなたが悪かったと指摘する前に、どんなにくやしい気持ちだったのか、悲しい思いをしたのか、本人が言える機会を与えてあげてください。“何でもないよ!” と返ってくるかもしれません。それでも子どもにとっては問いかけてもらった事に意味があるのです。
吉岡さんは“「よおし、描いてみよう」と自分なりに思いきって描くような子ども、こういう子どもが大きくなって社会に出た時、強く生きていけるのです。”と言っています。動揺した気持ちをまず受け入れてもらった子どもは、親の言葉に耳を傾けることができ、将来困難に直面した時に強く生きていける術を身につけて育つ、共通点があると思います。